イノチコア
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守田敏也さん講演『放射能と内部被曝のおはなし』
2012年11月3日(土祝)に大阪で行ったイノチコア主催のアートパレード『11.3イノチアクション』にて、放射能や内部被曝について精力的に講演されている守田敏也さんがお話し下さいました。
普段は内部被曝にあまり関心のないような方々も聞き入って下さり、大成功の集まりとなりました。いま必要な情報を易しく伝えてくださる守田さんのような方は本当に貴重と思います。
後日、守田さんがご自身のブログにレポートと詩を載せて下さいました。
イノチを想う強い意志にとても勇気づけられます。ぜひお読み下さい。
『明日に向けて(586)木々を、イノチたちを、被曝から守りたい!』
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/c76922a338736bf2f782fd98f2e855e0
守田です。
すでにお知らせしましたが、11月3日に、僕は「イノチコア」さんのパレードに参加し、一緒に大阪の街を歩いてから、30分ほど内部被曝についてお話させていただきました。
このパレードは、すべてのイノチのことを強く考えたもので、歩いている間のコールにもその思いがにじみ出ていました。僕も一緒に声をあげたり、手渡された太鼓を叩きながら思いを一つにして歩きました。この様子が以下から見れますのでぜひご覧ください。アクションの報告とともに、パレードの写真がたくさんアップされています。(僕も写っています)
11・3イノチアクション 反原発・反放射能デモパレードin大阪
http://inochicore.web.fc2.com/20121103_repo.html
僕の発言は、パレードのあとに公園に戻ってから行わせていただきましたが、歩きながらずっとイノチたちのことを考え続けたのでまずはそれから話させていただくことにしました。とくに僕が話したかったのは、山のこと、木々のことでした。
というのは僕は福島原発事故が起こる前までは、森林の保護に力を入れていました。とくに僕が携わってきたのは、カシノナガキクイムシの北上に伴って、ナラ類(ミズナラ、コナラなど)が集団で枯れていくナラ枯れ現象を食い止めることでした。
そのために京都の大文字山を中心に、多くの友人・知人にも協力してもらって、京都東山の中を駆け巡ってきました。同時に山のこと、ムシのこと、野生生物のこと、そして山里の人々の暮らしのことなどを学び続けてきました。
ところが福島原発事故で、活動内容が一変してしまい、ほとんど山にも森にも関われなくなってしまいました。それが心の中の大きな負担としてあります。山々のナラ枯れは相変わらずものすごいスピードで進んでいます。あちこちで枯れたナラ類の木々が目に映る。
しかも東北・関東を中心に、木々たちがものすごい量の放射能を浴びてしまいました。しかし僕も含めてほとんど誰も木々の放射能被曝を問題にすることができていません。ネットで探すと僅かに木々の被曝問題を取り上げている方々もいますが、しかし多くの場合、むしろ被曝した木々は、「除染」対象とみられるばかりです。
しかし私たちの生命をつないでいるのはこの木々たちです。木々たちが常に山に水を保水してくれてきたから、私たちはいつでも安定的に水を享受できています。それが私たちの暮らしばかりでなく、農の営みはもちろん、工業も、商業も支えてきているのです。
被曝した木々はどうなってしまうのでしょうか。ますます集団枯損が進んでしまうのではないか。そんな不安が心に去来します。でもだからといって、徹底調査をとも言いにくい。山の中の調査は、危険な被曝労働だからです。
やるべきことは何なのか。恐らくは生きている木々の被曝に対抗した徹底した植林ではないかと思えます。しかしその場合も、現にある放射能をどうするのかが課題になる。もちろん植林も被曝労働です。しかも山を知り、木々を知る人々といえど、ほとんどは放射能を知らないし、その影響の研究などおそらくほとんどなされていないと思います。
実はここに私たちの巨大な危機があるのではないか。木々を守りたと切実に思いますが、それは私たちの命に直結する問題でもあります。生命の連鎖がそこにあるからです。
私たちは私たちの命が本当にたくさんの連鎖の中にあることに目覚めなくてはいけない。私たちが、すべての生き物の頂点に立っているのではなく、すべての生き物によって生かされているのだということを自覚し、イノチたちに対する謙虚な思いと感謝の念を取り戻していかなくてはいけないと思います。
そのために、今後、山のこと、木々のことについても、可能な限りここで取り上げて、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。
今回は、イノチアクションでさせていただいたお話の冒頭部分、山と木の部分を文字起こしし、同時に、パレードから帰ってから書いた詩を(すでに579で一度紹介したもの)を紹介することにしました。読んでいただけると幸いです。
11.3イノチアクションでの発言より
みなさん。こんばんは。守田敏也です。これから内部被曝についてのお話をします。
今日のイノチコアさんのパレードで、みなさんが、木々や命の声を代弁する形で、原発はいらない、放射能から身を守ろうと訴えてくださいました。僕も一緒になって声をあげましたが、ちょっと内部被曝の話をする前に、私たちの国にある山のこと、森のことをお話したいと思います。
私たちの国は国土に占める森林率が67%です。これは世界の中でダントツの値です。日本に匹敵するのはフィンランドぐらいしかありません。他の国にはこんなに木がありません。
これほど多くの木々があることが私たちをどう支えてくれているのかですが、私たちの国は同時に、世界の中でも非常にたくさんの雨が降る国です。降水量もダントツです。ダントツなのですけれども、もし雨が、ただ山の地肌に降るのであったら、すぐに流れ落ちてしまって、麓にいる私たちには洪水として押し寄せてくるのですね。 ところがたくさんの木が植わっていて、山に降った雨を保水してくれます。そこにいったん蓄えられてから、少しずつ、麓に流れてくるのです。
ぜひみなさん。一度、川のほとりにたって、なぜ雨のない日に、水がとうとうと流れているのか考えてください。日本の川はいつでも水がとうとうと流れています。 それは木々がしっかりと水を山でキャッチしてくれるからなのですね。一時期、日本は戦争のためにたくさんの木を切ってしまいました。森林率は40%代まで落ちました。そのとき全国各地で洪水が起こりました。戦後の伊勢湾台風のときの水害などが有名ですけれども、あれも木を切りすぎたことが要因です。
それから戦後60年以上、主に山里の人たちが、えいえいと木を植え続けてきてくれました。そのことによって、私たちは、蛇口をひねれば当たり前のように飲む水が供給される国にいるのですね。世界ではまれです。飲み水を水道から飲める国がまれなのですね。
そのように私たちが普段、何気なく享受している幸せが、山、そして木々たちによって作られているということを知ってほしいのです。
そしてその山に大量の放射能が降ってしまいました。とてももう、胸が潰れるような思いでいっぱいです。東北関東の相当な地域の木々が被曝しています。木々は生命体ですから放射能によってやられてしまいます。これからその被害がだんだんに表面化してくると思うのですね。
しかしながら今、私たちはこれだけ膨大に出てきた放射線から、人々の生命を守ることが手一杯で、残念ながら山の木々を放射線から守ることは、ほとんど何もできていません。木はただ黙ってじっと耐えているだけです。
どうしたらいいのか。僕自身もまだ答えはでないのですけれども、ぜひみなさん、私たちの生命をつないでくれている山々が本当に悲しい悲鳴をあげているということ、知っていただいて、それをなんとかしていくことを一緒に考えていきたいと思います。
そのためにも、当然にもこれ以上の放射能をもう絶対に出してはいけない。そのためにはすべての原発をもうここで廃炉にしなければなりません。そのことを今日、イノチコアということで一緒に歩いたみなさんと、共通の思いにしていきたいと思います。
イノチ
イノチのために
街を歩く
イノチのために
声を上げる
人のイノチ
獣のイノチ
虫のイノチ
木々のイノチ
放射線は
イノチを切断する
外から内から
イノチを切り刻む
しかも放射線は
イノチに呻く間も与えない
誰にも何にも見えないところで
破壊が実行される
傷つけられるイノチの多くは
自らの声を持たない
抗議もできなければ
仕返しもできない
しかしイノチたちは
他の多くのイノチたちを支えている
一つのつながりとしてあるイノチの傷は
痛みと哀しみの連鎖をもたらす
例えば山の木々が潰えたら
誰が私たちに
豊かで穏やかな水を
与えてくれるのか
例えば鳥たちが鳴かなくなったら
誰が私たちの心に
柔らかな潤いを
もたらしてくれるのか
今、私たちは
イマジネーションの力で
すべてのイノチの痛みを
聴きとる必要がある
それは私たちの
非有機的な身体(からだ)の痛みであり
まだ感じるにはいたらなくとも
私たち自身の痛みだ
山を見よう
木々を見よう
虫のことを鳥のことを獣のことを
想像しよう
被曝を止め
痛みを癒す道を見つけたい
すべてのイノチのため
私たちのこのイノチのため
20121112
守田敏也プロフィール
1959年生まれ。京都市在住。同志社大学社会的共通資本研センター客員フェローなどを経て、現在フリーライターとして取材活動を続けながら、社会的共通資本に関する研究を進めている。ナラ枯れ問題に深く関わり京都大文字山での害虫防除なども実施。原子力政策に関しても独自の研究と批判活動を続け、東日本大震災以降は被災地も度々訪問。ボランティアや放射能除染プロジェクトなどに携わっている。2012年4月より、「市民と科学者の内部被曝問題研究会」常任理事に就任。同会の広報委員長も務めている。
著作として被爆医師・肥田舜太郎さんインタビュー「放射能との共存時代を前向きに生きる」岩波書店『世界』2011年9月号、市民放射線測定室と内部被曝問題研究会結成をルポした「市民と科学者が放射線防護に立ち上がった」岩波書店『世界』2012年4月号、物理学者・琉球大学名誉教授矢ヶ﨑克馬氏との共著、『内部被曝』(岩波ブックレット)などがある。
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